パムッカレは旅行の広告でもよく見るトルコの人気観光地のひとつだ。石灰でできた皿状の小池が何段も積み重なる写真は、旅行誌・旅行サイトのトップ画像になることも少なくない。
そんなパムッカレの石灰華段(石灰棚)丘の頂上には、実はかつて多くのローマ人を温泉保養地として楽しませ栄えたローマ帝国の都市ヒエラポリスの遺跡がある。
その遺跡の上に温水が溜まってできた遺跡プールが特に見所で、そこはパムッカレのメインスポットからは100m程離れているが、遺跡に興味がなくてもぜひ立ち寄ってもらいたい。とっても素敵な場所である。
今回は、パムッカレを中心にヒエラポリス遺跡を足早に散歩したので、その写真とともに観光を振り返る。
- ヒエラポリスはとてつもなく広大なローマ都市だった
- パムッカレは残念スポット?
- パムッカレを鑑賞しながら丘の上にある遊歩道を散歩する
- 神聖な雰囲気の遺跡プールだけでも行く価値あり!
- ヒエラポリス遺跡を遠目に眺めながら帰る
ヒエラポリスはとてつもなく広大なローマ都市だった
パムッカレとその地層から湧き出る温水を目当てに作られただろうその都市遺跡は、石灰華段に沿うように丘全体に大きく広がっている。
専門家が想像した当時の様子。右下に広がる白いエリアがパムッカレ。
2世紀頃に存在したこのヒエラポリスは2度地震によって破壊された。ローマ帝国時代にあった1度目の地震による破壊からは復興したものの、1354年の2度目の地震のあとは完全に廃墟となる。
トルコ旅行にて様々な遺跡を巡ったが、多くは紀元前の話だったので、比較的新しい都市で、尚且つつい最近まで残っていたのだなというのが個人的な感想。
地図上の15番が現在でも出入り口となっているため、パムッカレに行くには遺跡を通る必要がある。
遺跡の出入り口。当時も今と同じようにこの場所で城門として構えていた。
現在は当時より2m上に地上があるので、この門も2m程土に埋まっている状態となる。だから城門の天井がとても低い。
城門から中へ入ったときの景色。2m埋まっているのでほとんど何もない。この右側にもずっと何もない景色が続いている。
数少ない現在見えるもの。柱の一部が見える。
横切っているのは、側溝。かと思っていたが、2m上と考えると違うかもしれない。
ほとんど何もないが、この写真の一面が都市だった。右奥の山との境目にずっと城壁が続いているのが少し見える。
ここだけでも本当にだだ広く感じだがここはまだまだ入口。昔は5~6時間使ったバス観光だったそうだ。現在は1時間程の徒歩観光で、観光できるのはほんの一部だけだそう。
ということは、冒頭に載せた都市の再現図も一部のみの記載だったのかもしれない。まぁ、現在もほとんどが土に埋まった状態だし、その可能性は高い。
トルコ人ガイド曰く、パムッカレに来る際に下から見上げた連なる山の上全部に都市があったそうだ。
パムッカレは残念スポット?
すでに一般に伝わる話だが、パムッカレは人気の観光地である一方、残念な観光地としても有名。期待外れ、残念、がっかり。訪問した人のブログでは、そんな言葉が並ぶ。
観光誌でよく見るような、綺麗な青色に輝く温水が入った状態はもう数十年昔の写真であって、現在の状態ではない。あれに騙される人は多いはずなので、誇大広告の類である。おそらく、現在の写真に差し替えたなら、観光客は随分減ってしまうだろう。
なぜパムッカレの温水が消えてしまったのか、どこに消えてしまったのか。その答えは、周辺の施設でよく分かる。
泊まったパムッカレ周辺のホテルのロビーから撮影した写真。手前のプールの上に、湯気の出ているエリアがある。
湯気の正体は、温泉プール。湯気で隠れて見づらいが、3段か4段(うる覚え)に別れて、階段状に温泉プールが連なる。
そしてこのホテルもだが、周辺のホテルでは大体が一部屋一部屋のシャワールームにまで温泉が引かれている。
これが原因で、ここの温泉地帯の温泉が枯渇し始め、パムッカレの景色はここ数十年で打って変わり、がっかりするような状態になってしまったのである。
何が悪いのか、もちろんパムッカレは悪くない。つい最近まで当時のローマ人が愛した景色が広がっていたのに、現代に生まれた我々のせいで子供の世代には最早見ることができなくなった過去の遺物になってしまった。(私も温泉プールで遊んだし、部屋の湯船に温泉を溜めて楽しんでしまった。ちなみにだが、温泉は泥水(お湯)なので、汚れても良い水着を持って行こう。白い水着は2度と使えなくなる。)
パムッカレの観光客のためにホテルで温泉を流したのに、当のパムッカレが枯れて残念スポットと言われることが、残念なのである。
パムッカレを鑑賞しながら丘の上にある遊歩道を散歩する
城門から入ったあと、パムッカレまでは綺麗に舗装された道が続く。この林を抜ければ、石灰華段はもう近い。
突如として現れる石灰華段。手前の小池には温水が全くないが、奥から湯気が出ている。
ここでやっと見れたパムッカレの一端にテンションが上がって、すぐに温水がない状態を残念に感じるが、ここは序の口なので、スルーしても大丈夫。
もうしばらく舗装された道を歩く。右手にはちょっと古そう(紀元前とかのレベルで古くはなさそう)な建物が続く。
浮かびゆく気球を発見。
奥にも気球が見える。知らなかったが、パムッカレは有料で気球に乗れるらしく、これを筆頭に次々と気球が浮き上がっていた。
下から見上げた気球。本当に炎を使っているよ。。。怖い。
そして、いよいよパムッカレの入口に到着。入口のすぐ近くにメインスポットがある。
ジャーン。ここがパムッカレのメインスポット。一番綺麗に撮れる場所から撮影。石灰華段に温水が溜まっている。
時期は1月、時刻は朝8時、この日時は残念ながら逆光なので訪問時間には気をつけて。
もう1枚。辛うじて青色に輝いている様子が見える。丘の下には、大きな池と市街地が広がっているのが見える。
写真には誰も写っていないが、ここはパムッカレで現在唯一足湯をしても大丈夫な場所。数十年前は、広大なパムッカレのどこにでも入ってよかったらしい。
多くはないが、温水に足をつけている人もちらほら。
足をつけて撮影している人のすぐ横は枯れている(笑)
人がいる場所が、先ほどの温水がある部分。そこ以外はご覧のように枯れている。しかも汚れていて輝く白でもない。
ちなみにだが、先ほどの場所にだけ綺麗に温水が入っているのは、観光のために温水を制御しているからだそう。定時に限られた場所に温水を継ぎ足している。枯れてしまうのを防ぐために、他の場所への通路は閉じているらしい。ホテルへの温水を閉じれば良いのにと思わずにはいられない。
私は真冬に素足になるのを恐れたため、近くに流れている側溝の温泉に手を入れてその水質と温度を確かめた。写真の手前に写っているのがそれである。
広大なパムッカレを遊歩道に沿って先へと進む。今更だが、白いのは石灰で、温水に含まれる石灰が蓄積したものである。
何千年もかけて石灰がたまり、現在の姿になったんだなぁ。きっとヒエラポリスが栄えた時代も今の姿とは少し違ったはず。そう思うと、今は温泉が流れていないので、しばらくは今の姿が保たれそう。
ちなみにヒエラポリスが栄えていた頃は、ここは「美人の温泉」と言われて好まれたらしい。どの時代も人を集める決まり文句は同じだ。
ようやく日の当たる場所へ。朝日がパムッカレの石灰華段と気球を照らす。
あれーー、なんか温水が入っている場所にたどり着いた。先ほどの場所が唯一入れる場所と聞いていたけれど、ここにも足をつけて気球と景色を楽しんでいる人がいた。
もしこちらでも足湯が可能なのであれば、先ほどの場所より人が少なくて靴も脱ぎやすくて座ったまま足を浸かれるので穴場かもしれない。
人口の温水の通り道。先ほどの側溝とは違って、雰囲気がよくてなんとなく神聖さが増す。
気球と石灰華段。水はないけど美しい景色。
さらに奥に進むと、石灰華段丘の奥に田んぼが広がっているのが見える。そこから気球が何台か浮かび始めているので、あそこが出発地点なのかもしれない。
この辺からはそれなりにたくさんいた観光客も全くいなくなる。
たまに右手に遺跡らしきものを見ながら進む。この円形は何だろう。石灰華段のすぐ近くで遺跡を見れることには感動する。
更に遊歩道を奥に進むと、今後は自然にできたっぽい温水の通り道。ここも限定的に温水を流している場所のようだ。
先ほどの温水の行く先には、いっぱいに温水が溜まっている小池が。遊歩道からは遠く、誰も入っていない。
最初の場所と同じような光景に再び会えてテンションが少し上がるが、ここまで来る人は誰もいないみたいで、一人胸の中に仕舞うこととなった。もしかしてみんなこっちの景色は目にせず帰るのかしら。
パムッカレの石灰華段が終わると、遊歩道はまだまだ先に続くが、時間がないので断念。写真の奥には大浴場や墓地があるらしい。
走って行ってみようかとも考えたが、この時には奥に何があるのか知らなかったので、行かない方を選択した。今となると走ってでも行っておけばよかったと後悔。他の訪問者の方のブログを読むと、めちゃくちゃ遺跡っぽくて、遺跡好きは絶対行った方が良い。次行くことがあれば私は絶対行く(決意)。
おそらく温水の通り道。左が古い昔のもので、右が現代のもの?奥には湯気が見えるので、温泉があるのだと推測。
舗装された道がなく、行っても良いのか不明だったが、好奇心から湯気がある方向へ進む。時間がないので、小走りで。
やはり温泉があった。現代で言う温泉のように湯船があるわけでないそこに、胸がわくわくする。当時の人たちはこんな感じで自然の中の温泉に浸かっていたのだろうか。
この周辺は温泉地帯なので、石灰華段以外でもこうして湯気と湧き上がる温泉を数カ所に確認することができた。
温泉の近くには遺跡。柵があって行けないが、建物と階段状の何が見える。
またまた温水の通り道らしきもの。これは自然が生み出した形状だろうか。ここの温水は止められたんだな。奥には先ほど見えた遺跡。
メイン通りに戻り、遊歩道の散歩を終える。この左側に遺跡プールのある建物がある。
神聖な雰囲気の遺跡プールだけでも行く価値あり!
建物に入ると、そのまま通り過ぎてすぐに外に出る。そこにはパムッカレ温泉という名の遺跡プールがあるのだ。
プールに入るのは有料だが、見るだけなら無料だ。
真冬だからか朝早いからか誰も入っていないが、湯気の中に遺跡の一部が確認できる。
温泉に沈む遺跡。
本当に神秘的でとっても綺麗だった。冬の澄んだ空気とほとんど貸切の状態が相まって、とっても神聖な気持ちになる。冬に訪れるの、正解なのでは。
ちなみに、ヒエラは神聖、ポリスは街という意味で、ここヒエラポリスは現代でもこの場所に相応しい名前だと思った。
こんなに素敵な場所でしかも大切な遺跡が、夏場になると人混みに踏み荒らされるかと思うと少し複雑である。
遺跡プールからヒエラポリス遺跡が遠目で見える。一番奥に見える横長の建物は、1万5千人を収容できた円形劇場と思われる。
ヒエラポリス遺跡を遠目に眺めながら帰る
残念ながら時間がないので、ヒエラポリス遺跡を存分に観光することは叶わず、遺跡プールからの帰り道にその姿を遠目から眺めながら帰る。
赤い大きな壺。トルコの遺跡ではどこでも見ることができる。おそらく穀物や水なんかを保管していた壺。大体は土に埋まっている状態なので、こうして全体が出ているのは珍しい。
遠目にしか見えないのが残念。
この下には何が埋まっているのだろう。奥では気球が浮かんでいる。
トルコではカッパドキアの気球体験が有名だが、パムッカレの気球に乗ればヒエラポリス遺跡の全体像(一部像?)を上から眺められたのでは?!と考える。ここでは時間がなかったので乗らなかったが、今度来たら乗りたい。気球に乗るのは怖いけれど、遺跡を見るためなら頑張れそうである。
ここ全体にまだまだ遺跡が埋まっているということに、改めて感じ入るものがある。もしかしてまた何十年後にここを訪ねると、また違った景色が見えるのかもしれない。
さよなら、ヒエラポリス。