きのこ岩とその上空に浮かぶ気球の写真で有名なカッパドキアは、イスタンブールと並ぶトルコの人気観光地である。かくいう私も、その写真が使われた大広告でカッパドキアの存在を知り、トルコ旅行への意欲が湧いた一人だ。
実際にトルコを旅行してみると遺跡の多さに驚くが、ここ、カッパドキアでも数千年昔に生きていた人々の軌跡を見つけることができる。カッパドキアの大自然は古代人の住処やシェルターとして利用され、私たちに当時の姿を想像させる。
今回は、そんなカッパドキア観光を写真とともに振り返る。
カッパドキアを形造った3つの火山
日本人が知っている「カッパドキア」という地名は、「美しい馬の地」という意味の古代名で、現在は使われていない。「カッパドキア」では現代トルコ人の5割には通じないらしい。
通称「妖精の煙突」と呼ばれる有名なきのこ岩やカッパドキアの絶景は、3つの火山の噴火により作られた大地が雨や川によって侵食されて作られた。
その火山は全て、コンヤからカッパドキアに向かう途中で発見できた。
3つのうちの1つめの火山。富士山っぽい。確か、シルクロード(現在ではひたすらに直進のコンクリート道路)をバスで走っていたときに見つけた。
2つめの火山?写真左か右か、どっちなのかも忘れた。もしかしたら全く関係ない写真の可能性もある。
3つめの火山。カッパドキアからも眺められる。
ついでに、カッパドキアの有名観光地に近づいた辺りで見つけた、斜面に作られた馬の地上絵(?)
美しい馬の地という地名に倣って観光用に作られたのだろうか。事前にテレビ番組か何かでこれを作っているドキュメンタリを見ていたので、たまたま見つけたときにはテンションが上がった。
また、この馬の地上絵の周辺でも、ところどころ岩に人工的な穴が空いている箇所が見られた。ほとんどが砂岩で、掘るのは難しくないらしい。
これから訪れようとしている観光地も、はるか昔、紀元前1800年から古代人によって掘り始められたものである。ヒッタイト時代から、古代人は家を建てるより掘るほうが楽と知っていたのだ。
現在では勝手に掘ることが禁止されている。1990年代までは好きに掘ってよかったそうで、その当時に人々が住んでいたところは今は洞窟ホテルになっているそう。
私も素敵な洞窟ホテルに宿泊したので、記事の終わりにおまけで書く。
カイマクル地下都市
カッパドキアの大地の下に、壮大な地下都市があるのをご存知だろうか。
実際には住むところではなく、敵から身を隠すためのシェルターとして使われた場所である。
カッパドキアの画像を検索しても、上位に一枚の絵(写真ですらない)しか出てこないので、マイナーなのかもしれない。
そう、私が検索画像で見たのも、こんな断面図だった。アリの巣のように、地下に何層にも渡って張り巡らされた部屋。
記憶が曖昧だが、地下7層まであって、観光できるのは5層まで、だったかな。
まずは、ワクワクが止まらないこの地下都市を見学する。
奥に見える建物から地下都市に入れる。建物の前にはお土産屋さんが立ち並ぶ。
ゲートでチケットのQRコードを読み込ませて、中へと進む。なんとなくだが、エジプトの王家の谷にある王墓の入り口を思い出す。全然違うが、ちょっとだけ似ている。
地下都市の中は当たり前だが暗闇で、随所随所が照明で照らされている。
狭い通路。一人通るのが精一杯。
より地下へと続く道。ここは通らなかったが、階段になっている。基本的には階段ではなく下り坂で地下へと進む。
たまに段差の大きな階段もあるし、廊下は基本的に頭上が低いので注意が必要だ。屈まなければ通れない場所もある。
部屋の規模はこのくらい。部屋も天井は低め。
複雑に掘られた部屋には、いたるところに更に穴が掘られている。いわゆる棚だったり壺の役目だろうか。
床部分にもがっつり穴が空いていて、そこには転落防止の透明板がはられていた。
昔の人は電気もなく、火の光だけでこの暗闇の中、穴の空いた床を行き来していたのだろうか。すごい。
ところどころにテーブルのような丸い大きな石。綺麗に丸い模様が見えるが、何に使っていたのだろう。
ひときわ大きな石。これはテレビ番組か何かで「鉄を溶かすために使われたと考えられている石」と事前情報があったので、見つけたときにはテンションが上がった。どう使われたのか不明だが、ヒッタイトと言えば鉄だし、ここは地下都市という名のシェルターだし、武器でも作っていたのだろうか。
今度は床ではなく、壁に沿うように置かれた巨大な丸石を発見。地下都市の本来の扉である。
丸石の下の床が緩やかな下り坂になっていて、左下の石で丸石をせき止めている。地上で何かが起こって人々がこの地下都市に逃げ込むとき、最後の人がこの300kgの石の扉を坂を利用しつつ簡単に閉められるような構造なんだとか。
地下都市内には飲食物が貯蔵されているので、扉を開けるときは緊急性がないため、ゆっくりで大丈夫なんだそう。
また、地上へと続く扉の向こう側は狭い通路となっていて、敵は一人ずつしか通ってこれない上に大きな武器を持って入れない。セキュリティ面も考えて掘られたデザインに感服する。
これは、一番下の層から上の層まで通る空気孔。これが地下都市内に何本も設置されていることで、空気が確保できる。
また、この空気孔を利用して、一番下の層に溜まった地下水を引き上げることもしていたらしい。
写真の空気孔の下の方が緑に見えるが、これは苔?あそこまで地下水が溜まっていたのだろうか。
水やワインや食べ物の貯蔵は、年中一定の温度に保たれる環境によって可能になっている。地下ならではだ。
料理のために火を使っていた場所(この写真がそれであったかは記憶が曖昧)もある。天井には黒いススが残っている。
ススが残っているということは、実際にシェルターとして利用がされたということでもある。特に、3世紀ごろ、ローマ時代にキリスト教徒がたくさんここに逃れてきたそう。
穴はヒッタイト時代から掘り始められたと言うのだから、少なくとも2千年の時をかけて、この地下都市と呼ばれるまでの壮大な洞窟が出来上がったのだろうか。
地上に出てお土産屋さんを過ぎたところに、あの扉に使われていた丸石が展示されていた。
丸石の中央の穴は貫通していて、奥が見える。敵の様子を伺ったり攻撃するのに使ったのかもしれない。
丸石の横幅。分厚い。その奥にはトルコ各地の遺跡で見られる大きな壺。
近くの建物の前には銃を持った人。トルコのポリス(か警備員)、銃持ってるんだよな。空港でも銃を持ったポリス(か警備員)に迎えられるからな。怖い。
ウチヒサル城
お城に使われたことがあるとも言われるウチヒサル。ウチは、先っぽ、はじめ、とんがっている、ヒサルは城を意味する。
よく分からなかったが、恐らく右の岩がそれ。
後から検索すると、実はめちゃくちゃよかったウチヒサル。頂上にあるウチヒサル城に向かって斜面いっぱいにとっても素敵なウチヒサル村が作られている。
この記事でその素晴らしさを確認できるが、残念ながら私が行ったのは、村がない方の側面で城の裏側のよう。悔しい、ウチヒサル村、とっても行きたかった。
仕方ないので村の反対側から城を眺める。こちらはこちらでお土産屋さんもあるので、れっきとした観光地みたいだ。
木に壺をかけるスタイル。トルコでよく見かける青い目のお土産も木にぶら下がっていたので、この壺もお土産なのかも。
ポツンと一軒家。今でも使ってそう?管理人の家か?めちゃくちゃハトが乗ってる。
ギョレメ野外博物館
1985年に世界遺産に登録されたギョレメ野外博物館は、多くの岩窟教会、聖堂、修道院が集中するエリア。
その昔にキリスト教徒がイスラム教徒の圧迫から逃れるために、岩を削った洞窟に教会や修道院を造り、その中心となった場所がギョレメで、かつては350~500の教会があったと言われている。
くり抜かれた扉の奥は部屋になっていて、いくつもの部屋が階層を連ねている。
岩窟教会に描かれた絵の一覧。実物の絵画は撮影禁止。左上の絵画のように、顔の周りに丸と十字が描かれた人物がイエス・キリストらしい。
教会は2~3世紀から作られ始め、6世紀にはイスラム教徒による偶像破壊で教会内の絵画は一度全てなくなった。
現在残っているものは9世紀に再度描かれたものらしい。
岩窟教会の一つ。教会内には壁や天井に素晴らしい絵が残されている。
中は撮影禁止なので、先ほどの絵の一覧ボードを。岩窟教会の天井はこんな感じ。中央の男性はイエス・キリストだな。
天井のアーチや柱部分なんかも岩を掘って造っているもんだから、掘った人はすごいなとつくづく思う。間違った場所を掘ってしまったら修正が大変そう。
こちらは修道院?
絵画がないところは撮影OK。ダイニングだろうか?
谷の向こうの岩肌にも穴が見えた。あんな高い場所までどうやって登ったのか。中から上に掘っていったのかもしれない。
きのこ岩
カッパドキアの有名な風景写真の一つ、きのこ岩。通称「妖精の煙突」。
火山の噴火物が柔らかい大地の上で固まり、長い時間をかけて、柔らかい大地が雨や川によって侵食されて現在の姿になる。
遠くから全体を見ると、侵食される前の大地の形が分かる。
大量のきのこ。
観光用に道は綺麗に整備されている。
きのこ岩にも先人たちが掘った跡があった。
きのこ岩のすぐそばには、きのこになりそびれた大地もある。
なかなか際どいきのこ。
住居エリア。2~3階建て。中に入れる。
入り口。
部屋の中から際どいきのこ発見。
別の方向にもきのこが見える穴。もしかしてこれは窓の役割?
上を向くと、天井に2階へ通じる階段を発見。ただ、階段の1段目までどうやって手をかけるのか不明。。。
別の場所にはキッチンだろうか?天井にススがついているように見える。
3階部分にある窓まで行けるなら行ってみたかった。
自然が創り出した不思議な形。
教会らしき洞窟。天井薄いけど大丈夫か。
その隣には、警備員(?)室。木製のドアがついている。世界遺産の洞窟の一室を警備員室にしてしまうなんて少しびっくり。景観を汚さないためだろうか。
警備員さんたちは日が暮れる前にお勤め終了。お弁当箱を持ってほのぼの、かと思いきややっぱり銃を携えている。
奥に映るのはお土産屋さん。
近くには観光用のラクダも。
おまけ1
カッパドキアでは岩の形と言えばきのこが有名だが、他にもいろんなものに見える岩がたくさんある。
謎に観光客が多いこの場所。ここから見える岩が彼らを楽しませている。
ラクダ。
キスをするカップル。
中央に鳥。当時は右を向いたヒヨコだかペンギンだかに見えたが、よく見ると左に目とクチバシがある鳥に見える。
カッパ?
亀だかカエルだか言っていたもの。私にはどう見てもそうには見えなかった。
おまけ2
カッパドキアと言えば多くの気球が飛んでいる写真。
早朝に、宿泊ホテルからその光景を見ることができた。
カッパドキアの空を無数の気球が飛んでいる。数えてみると40機以上あった。
パノラマ。左側にはウチヒサル城と行くことのできなかったウチヒサル村が見える。
宿泊ホテルは、岩を削って作られた洞窟ホテル。
砂岩をうまく掘って部屋を作っている。
電気が点くので、天井の上には配線の空間もあるのだろう。
エアコンやテレビも完備。
寝室の他に水場も。シャワーとトイレと洗面台が設置されている。水場の壁や床は、さすがにタイルで覆われていた。
ホテル内の廊下。
廊下では複数箇所で建設時の写真が飾られていて、その白黒写真も楽しめた。
ホテル内にはプールも。受付があるので有料なのかもしれない。
ホテルの外にもプールがある。
ブランコも。
掘って削って造られたとは思えない外観。
近くから見ると確かに砂岩である。くり抜かれた窓には窓枠とガラスがはめられ、ベランダまで造られている。
部屋の中から見たベランダ。寒そうで出てはいないが、飾りでなくちゃんとベランダとして機能している。部屋の位置によってはベランダから気球が見えるかもしれない。